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プロフィール

haykichi

Author:haykichi
本名:『山下かよ子』
Kayoko Yamashita。

日本で小学校の教員として通常学級と特別支援学級で勤務したのち、夫の海外転勤で渡英。イギリスではプリ・スクールで働き、今は小学校でLanguage Assistantとして勤務。
Nottingham 大学でSpecial Needs Education (特別支援教育) 修士号取得 (2012年)。
Jolly Learning 社のJolly Phonics と Jolly Grammar の公認トレーナー(2013年)。

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朝日中学生ウィークリー7月1日号:取材協力 «  » Induction/ Transition day

Year 1 phonics screening check (フォニックス スクリーニング チェック)

2012/07/04 (水) 19:48
2012年6月18日~22日の1週間、Year 1 の子どもたちを対象に「phonics screening check (フォニックス スクリーニング チェック)」というテストが全国で行われました。

これは政府からの通達で、教師が Year 1 の子どもたち一人ずつ、どれだけフォニックスができているかをテストするものです。
フォニックスとはココでも紹介しましたが、単語のつづりと読み方を体系立てて学習するものです。英語は、a という文字が ア と発音されたり エイ と発音されたり、アー と発音されたりする、読みと綴りが一致していない言語です。これに対して日本語のひらがなは、「は」「へ」という例外はあるものの、「あ」はいつでも「あ」と読むので、読みと綴りが一致している言語といえます。

さて、なぜ政府が今年、全国でこのテストを行ったかと言うと、

・11歳の子どもの6人に一人の割合が、読みが苦手
・2009年の PISA (Programme for International Student Assessment:経済協力開発機構 (OECD) による国際的な生徒の学習到達度調査) で、世界的にイギリスの生徒の読みが遅れていると指摘
・おまけに PISA の調査によると、読みの部門でイギリスは過去9年間で世界レベル9位から25位に急落
・若者のリテラシーレベルの低下
・Year 2 のSATs のテストの読みで、いい成績を取っている子は、その後もいい成績を維持できるけれど、逆にこの段階で読みを苦手とする子は、その後も読みの上達の見込みが低くなる⇒自信をどんどん失っていき、より読むことを避けようとする悪循環

こうした事実があり、これではやばいと思ったイギリス政府も、「読み」に力を入れることにしたのです。そこで、どれくらいの子どもが読みができるのか現状を把握するために、今年、全国一斉にこのテストが行われたわけです。


テストは、各子どもに40の単語を読んでもらい、どれだけ読めるか、また間違いが多いのはどの単語か、また間違えた場合にはどのように読み違えたか、すべて先生が記録します。

40の単語と言っても、20単語は Real Words (リアルワーズ:意味を成す単語) で、半分の20単語は Pseudo Words (スードゥワーズ:偽物の単語、つまり意味をなさないもの) から構成されています。

Real Words の例としては、look, make, shop, caught など
Pseudo Words の例としては、jook, dake, thop, kight など

一応、この偽物の単語の時には、alien (エイリアン:宇宙人) の絵を記載しておき (子どもたちはこういう単語のことを「エイリアンワーズ (宇宙語)」 と習う)、偽物の単語とわかるようにはなっています。なので、子どもも読んでみて、「おかしい」と思ってもこの絵を見れば自分の読み方が間違っているわけではない、と安心するわけです。

気になる結果ですが、政府によれば、40単語のうち、32個以上読めていれば、フォニックスの知識がきちんと入っているとみなされますが、31個以下の場合は、Year 1 の到達レベルに達していないということで、来年の同じ時期に再テストをするそうです。

より詳しい情報を知りたい方は、イギリス教育省 (Department for Education) の Year1 Phonics Screening Cehck Framework for pilot 2011 をご覧ください。(英語のみ)

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さて、私が勤務する学校でももちろん、このテストを行ったのですが、今日、保護者向けにこのテストの目的と結果についてのミーティングが開かれました。
実際に、保護者の方に40の単語を見てもらったのですが、多くの親からは
「こんな意味をなさない単語を読ませてもしょうがないじゃないか」
「この年齢だったら、絵を見ながら文章を読むわけで、単語だけを読んでも意味がない」
など、この宇宙語をテストするということに非難が集中しました。

たった一人だけ、
「私は40単語のうち、全てを宇宙語でテストしてもいいと思っている」
というお母さんがいらっしゃいました。
「子どもにとって、毎日が新しい単語との出会いのわけで、本を読んでいても、全て知っている単語ばかりじゃない。中には全く聞いたこともない単語でも自分で読んで、単語を増やしていかないといけない。そのためには、フォニックスがきちんと入ってなければ新しい単語を学ぶことができない。」
ということです。

私自身、このお母さんの意見に賛成。
というのは、私自身も含め私が担当している子どもたちは、「英語が母国語ではない」子どもなのです。英語話者にとって「聞きなれた普通の言葉」がこの子どもたちにとっては「知らない単語=宇宙語」に当たるのです。

今日も子どもたちと一緒にリーディングの勉強をしていて、junk (ジャンク:がらくた) という単語が出てきました。この言葉はこの子たちには初めて聞く言葉であり、初めて読む単語でもあったのです。一生懸命 j-u-nk と読み、何とかジャンクと読むことができましたが、イギリス人の子どもたちが「僕の家にもjunk いっぱいあるよ~」と言っている中、彼らの顔は???でした。junk という言葉が「宇宙語」だったんです。

もちろん、このミーティングの後、すぐに Year 1 の先生にこのことを伝えました。先生たちもそういった視点で全く見ていなかったので、正直、驚いていました。
このフォニックス・スクリーニング・チェックは、私にとっても来年度、新しい取り組みを考えさせられるものとなりました (親向けのフォニックスコースを開講しようかな~とかね)。

いやぁ、それにしてもやはりフォニックスって、大切ですね。日本でもフォニックスを取り入れていったら、英語嫌いが減るような気がするのは、私だけでしょうか。
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